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つながると、つづいていく

山から収集した落ち葉や都市部で使用された生分解性のプラスチックを使った堆肥を作り、そこから農作物を育てる。そしてその野菜を都市部で流通させることにより、食と農を通して都市と地方をつなぎ、「サスティナブル」な環境先進循環型社会づくりを目指すFAN LAB。地域商社として「東京と八ヶ岳を繋げる」「双方のコミュニケーションの拠点」として活動を続ける八木橋 晃代表に、FAN LABが生まれた経緯を聞いた。

▲FAN LAB代表 八木橋 晃

原点は山登り

八木橋代表は東京都三鷹市出身で、お父様が山登りが趣味であったため、子供のころから毎年夏になるとお父様に連れられて登山のため山梨県を訪れていたそうです。幼稚園で甲斐駒ヶ岳に登り、小学4年生くらいまで、毎年南アルプスの山々に登っていたとのこと。山梨県は中央線沿線ということもあり、昔から自宅の延長線上にある観光地として馴染みがあったそうです。

社会人になっても、夏になると山梨県内の避暑地によく足を運んでいたそうです。

今から約20年前、IT業界が一大成長産業だったころ、八木橋代表はその業界の最先端でお仕事をされていました。役職が上がり、300名近い部下をマネジメントする中で、毎日PCの前に座り仕事を続けていくと体調を崩す人たちが続出していきました。「何とかしなければいけない」と思い、時々レクリエーションの一環として山梨県内の観光地に仕事仲間を連れてきていました。皆自然の中に入ると一瞬は体調が回復しますが、また仕事に戻ると体調を崩し、倒れていってしまう状況の中で、「自然の中にいる方が人はもっと精神的に楽に生きられるのではないか」と考え始めたそうです。

当時の仕事はマネジメントが主体で、皆が仕事をやりやすい環境にすることが一番の課題として従事していた時、八木橋代表自身の体にも変化が訪れます。ある日、満員電車に乗れなくなり、それから快速電車にも乗れなくなり、閉鎖された空間に閉じ込められることに恐怖を感じるようになってきたそうです。そして窓がない会議室などにも入れなくなり、「人間がずっとITの環境に囲まれているのは限界だ」と感じたそうです。

農業との出会い

そこから会社を辞め、セラピー系の事業を始め、フランチャイズの仕組みを作り、7店舗まで拡大していきました。同時期に東京の企業との交流事業を始め、初めて北杜市を訪れたそうです。北杜市須玉町にある増冨地域の耕作放棄地を農地として戻し、荒れた土地をきれいにして、そこで作物を育て東京の企業に買い取ってもらうというプロジェクトに参画し、有機農業の人材事業にも携わったそうです。その当時、北杜市の地域おこし協力隊の人たちが、卒業後北杜市を離れてしまうことが多くあったため、現地法人として地域おこし協力隊を受け入れるために、2017年にFAN LABを設立いたしました。

当初、北杜市への移住は考えていなかったそうですが、地に足をつけないと農業はできないこと、また地域側に立って東京と交流をしないと、地域側に経済が回らないと考えたため、現在は北杜市を軸に東京との二拠点生活を送っています。

サスティナブルは特別なことではなく、日本の農業では昔から限りある資源を上手く使って循環させていました。増冨の事業でも落ち葉堆肥を作り、山の資源を使って野菜を育てることをしてきていたそうです。そのため、山の堆肥を使うと野菜の味に影響することは当時から実感していたそうです。

化学肥料を使用すると、野菜のあくが強くなり、栄養価が足りなくなる。ほうれん草など作物のビタミン量は、化学肥料を使うと栄養分が少なくなる

「日本の野菜では『美味しさ』という基準がないが、昔ながらのやり方で野菜を育てると、断然味が美味しい。食べるためだけではなく、こういうライフスタイルに共感してもらう、都市部の人に地方に興味を持ってもらうためには、そういう話をした方が良いと考えている」

「レクリエーションを目的として東京から地方に来ても、一過性のものになってしまう。地方側の人たちと話をして、地方側に役に立つためにはどうしたらよいか、都市部と地方を結ぶために、東京で使ったものを地方に持ってきて、また東京に戻すことをどういう形にしたら出来るかを模索していった結果、今の方法に行き着いた」と語る八木橋代表。

なぜ八ヶ岳なのか?

「地域コーディネーターとして、都市部の企業の価値につながることを、地域資源を使って組み立てていくのがFAN LABの役割。八ヶ岳の資源を使って、東京に営業をしに行き、地域と都市部の両方にとって利益となるようプロジェクトを組み立てていくことが、重要だ」と八木橋代表は考えています。

その上で東京側の人たちに環境を宣言するためには、一定の資源環境に配慮されているところでないと難しく、また日本人にとって観光地として魅力的であることという点を考慮したとき、八ヶ岳と同等のところでは、軽井沢、那須、伊豆などもありますが、一次産業が充実している点などもあり、八ヶ岳が首都圏側の企業にアプローチする上で一番適していると考えたそうです。

これからの展望

「最終的には八ヶ岳のような拠点を日本中に作りたい。拠点間が東京を介さずに連携を取り、自立継続性のある形で拠点を開発していく。東京のお金を地方に落として、地方で経済が回るようにすることが大事」

「ITという最先端のビジネスをやってきたことが、今でも財産として残っている。そういう環境にいたことで、地方で生きてくことを選択しても、東京との距離感を感じずにITの手段を使ってコミュニケーションをとることができ、オフライン、オンラインの両方のつながりを持つことが役に立っている」

「IT業界にいたときに感じた課題として、物理的な豊かさを得るには東京の方が良いが、人間としてみたときにマイナス面の方が多い。都市部ではお金はあるけど、自然はなくなり、精神的なゆとりがない。今の時代はそのバランスをとることが必要」と語る八木橋代表。

地方にいると情報弱者だと思っている人が多いと感じます。特に若い世代が東京に出て行かないと先端から遅れてしまうと考え地元を離れてします。しかし八木橋代表が地方に来て思うことは、地方は競争が少ない分、ビジネスとして成功できる可能性も高いと感じているそうです。

食と農を通して、地域と都市部を結び、循環していく社会が実現していくと「人口減少」「一次産業衰退」「集落の過疎化」「耕作放棄地」など地域の抱える課題に対して突破口を開く可能性があります。今、FAN LABでは八ヶ岳を舞台に「環境先進循環型社会」を目指して地域の方々と共に動き出しています。これからの活動にぜひ注目してみてください。

(記事番号:4-2)

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